こんにちは。松山友佳子です。

 

「わ、大きい!」

 

それが彼の第一印象でした。

 

「本当にやさしい息子なんです。でも、お相撲さんみたいに大きくて。見た目が怖いって言う女性もいるようなんです。あの子でも本当に結婚できるのかしら?」

 

お母様からそう聞いていたのですが、サロンに現れた彼は、確かにものすごい巨漢。

圧倒的な存在感がありました。

 

本当、お母様のおっしゃる通りだった!

クマさん系の男性って、母性本能がくすぐられるので好きな女性も多いはずなんですけどね。

 

なぜカンパネラにいらしたのか?

何か結婚できない秘密が隠されているのか?

 

じつを言うと彼、条件的にも決して悪くありません。

というよりも、とても条件が良いほうです。

 

勤め先は有名な一流企業。

そのシステム部門でバリバリ働いていて、彼は高学歴・高収入の超エリート。

職場ではものすごく将来を嘱望されている期待の星。

 

話を聞いていると彼の仕事ぶりがよく伝わってきます。

 

ふつうに考えればモテモテのはずですよね。

なのに、そのクマさんのような風貌で少しばかり損しているようでした。

 

そのうえキッパリと言われてしまったのです。

 

「僕、女性と話すのがものすごく苦手で積極的になれません!」

 

わあ!

 

そもそも彼は気軽に恋愛できるタイプではなく、好きになった相手を一途に想い、とても大切にする男性。

少しばかりピュアすぎるかもしれません。

 

以前、2年ばかりお付き合いした女性がいたそうですが、ちょっとした行き違いに心が深く傷ついてしまい、、、

それからは女性に対して極端に消極的になってしまったようです。

 

トラウマというやつですね。

 

本人にもその気はあるし、ご両親も心配している。

なので早く結婚したいけど、自分から積極的にお相手を探していくのは絶対に無理。

そんな状況で困っていらっしゃいました。

 

「松山さん、こんな僕のことを理解してくれる家庭的な女性を紹介してください」

さあ、こんな感じでクマさんの婚活が始まりました。

 

でも、私、すぐに発見しました。

 

しゃべりだすと、彼、とても愛くるしい笑顔になるんです。

 

とにかく相手の顔を見ながら一生懸命話します。

喋れば喋るほど、ニコニコしてきて、まるで大きなクマのぬいぐるみみたい。そんな可愛らしさを発見してしまったのです。

 

その昔、幕末の英雄として有名な西郷隆盛はものすごい巨漢で周囲の人を圧倒したとか。でもしゃべり出すと何とも言えないような愛嬌がこぼれ、とても親しみがあったともいわれ…

 

まさに彼もそんな感じ。

 

じっくり話すとわかるのですが彼はいろいろなことを知っていて、それをおもしろ可笑しく話してくれるんです。これだけ引き出しがあれば、彼女になる人もさぞ楽しいだろうなあ、そんなことを思いました。

 

彼はもともと明るいタイプの男性。

だけど今は恋愛対象とすべき女性との会話に苦手意識を持っている。

 

それがわかったので、一緒にお相手のプロフィールを確認しながら、いくつかのお見合いを設定してみました。

でもどの女性とも打ち解けた話が出来なくてなかなか交際まで発展しません。

 

そして3ヶ月ほど過ぎて…

うーん。このままではちょっと難しいかな。

 

そこで私のとっておき。

ふつうにお見合いを設定するよりも私のネットワークを使って他の相談所から推薦してもらった女性と引き合わせてみたのです。

 

お相手は8歳年下の控えめな女性。お料理が得意で、相手の話にしっかりと耳を傾けてくれる聞き上手なタイプ。

どうやら彼の気持ちを上手に引き出してくれたみたい。

 

たいていの男性に言えることですが、やはり自分の話を熱心に聞いてくれる女性には好意を抱きやすいものですよね。彼も例外ではなく、こちらの女性にどんどん心を開いていったみたいです。

 

最初の頃は彼も積極的ではなかったし、お相手の女性も控えめでしたので。

どちらがリードするわけでもなかったのですが、なんとなくお付き合いがスタート。

 

そしてお互いの気持ちがどんどん近づいていき、真剣交際から3か月たった、ある日のデートで彼からプロポーズ。

 

場所は二人で何度か行ったレストラン。

彼はこっそりとお店の人と打ち合わせして、奥に花束を用意しておいて。

デザートのときにプロポーズの言葉とともに彼女に花束を渡したんだそうです!

 

本当はこういうことができる男性なんです、彼は。

誰かを大切に思う気持ちがその人の行動を変えたという、まるで見本のよう。

 

女性との会話は苦手といっていたのと同一人物とはとても思えませんよね。

これだから恋って素敵ですし、私たちにいろいろな勇気を与えてくれると思うのです。

 

結婚の報告にいらしたお二人。

彼女は、彼と私のやりとりを隣でニコニコ聞いていました。

 

ちなみに、ロマンチックなプロポーズで何を言ったかは秘密なんですって。

素敵なクマさんカップル、どうぞお幸せに!

――松山友佳子

 

念のため。ご本人が特定されないように物語の一部を単純化してお伝えしています。

何卒ご了承ください。