こんにちは、

松山友佳子です。

 

今回は心配を抱えている女性のお話です。

「本当に私と結婚する気があるのでしょうか?」

そう切り出したのは、

幸恵さん(38歳、仮名)不動産会社勤務の方です。

 

結婚相談所には、
“プレ交際”と“真剣交際”の区分があります。

 

“プレ交際”は相手の人柄を見ていく期間なので、

何人と付き合ってもいいし、

新たなお見合いをしてもいい。

それを経て1人を選び“真剣交際”に入るのですが、

 

ここからは結婚に向けての具体的な話をし、

3カ月を目安に成婚を決めて、

退会をしていくのが結婚相談所の通例です。

 

ところが真剣交際に入ってから、

幸恵さんが和則さん(43歳、仮名)

に結婚に向けての話をしようとすると、

具体的な答えがまったく返ってこず、

一向に結婚への話が進まないというのです。

 

「私の仕事は1年更新だから更新してしまったら、

そこから1年は出向先を辞めることができなくなる。

 

和則さんの今の家に住むとなると、

通勤に2時間以上かかるので、通いきれない。

 

彼と結婚するなら、

それがいつ頃になるのかメドをつけて、

仕事を契約更新するときに

出向先を通勤圏内に変えたいんです」

 

和則さんは5年前に

都内の一等地にマンションを購入しており、

結婚したらそこを新居にする心積もりでいました。

 

「この間会ったときには、何の話も進まないので、

 

『あなたは、私と本当に結婚する気があるの?』

と聞いてしまいました。

 

そうしたら、

『それは、もちろんありますよ』

と言うんですけど、

 

それもなんだかのらりくらりで」

結婚に向かおうとする2人のスピードが、

あまりにも違っていました。

 

「結婚は決断である」と、

私は会員さんたちによく言っています。

 

1人の生活から2人の生活になる。

そのためには決めなくてはいけない事柄がたくさん出てくる。

 

互いの両親へのあいさつはどうするか、

住む場所はどこにするか、

結婚式はどこで挙げるか、

入籍はいつにするか、

生活するおカネの配分はどうするか、

などなど。

 

順次決めてどんどん行動を起こしていかなければ、

2人が一緒に生活するところまでたどり着けない。

 

業を煮やしている彼女に、私は言いました。

「まだお互いの親への挨拶もしていないでしょう?

だとすると、

それを終えて、

結婚式場探しをして、

入籍して、

一緒に住むのは、

どんなに早くても半年から1年先よ。

 

2時間かかる通勤も数カ月なら我慢できるだろうし、

仕事は今回更新したら?

結婚することは決まっているのだから、

やれることからどんどんやっていきましょうよ」

 

こう言う私に、

幸恵さんは気を取り直したように言いました。

 

「そうですね。私はどちらかというとせっかち。

でも、彼はのんびり屋。

お付き合いしていたときに

私の言うことを何でも聞いてくれたので、

こういう人と一緒に暮らしたら楽だと思って決めた結婚でした。

私が舵取りをして、やれることから進めていきます」

 

そう決めた幸恵さんでしたが、

 

いざご家族にお会いすることが決まった矢先に、

母や姉の前では、

僕のことを“和則さん”って、

下の名前では呼ばないでほしい。

 

“安田さん”って、苗字で呼んでほしいんだ。

まだ結婚していないんだからね。

 

あと、姉から、何を言われても絶対に、

『それはどういうことですか?』

と聞き返したり、

反対意見を言ったりしないでください。

そこは、本当にお願いしたいんだけど、大丈夫かな」

 

この言葉を聞いて、

和則さんのすべてが見えたような気がした。

 

小さな頃から強い姉に仕切られ、

それにいつも従ってきた。

だから、幸恵さんが舵取りをしている交際は、

心地よかったのではないか。

 

しかし結婚の段になると、

 

幸恵さんと2人だけの関係ではなくなり、

お互いの家族とのかかわりも出てくる。

そこには、絶対に逆らえない姉の存在があって、

何を決めるにしても“

これをしたら姉が何ていうか”を考えてしまって、

二の足を踏んでいたのではないか。

 

火に油を注がれた状態の幸恵さんは、

思わず怒鳴ってしまった。

 

「お姉様の前での言動は、

よ~く考えさていただきます!」

 

この出来事が起こってから1週間後に、

安田さんの相談室から、

『交際終了』の連絡が入りました。

 

安田さんの仲人は、

とても申し訳なさそうな声で私に言いました。

 

「真剣交際に入ったら、

たいていは皆さんが順調に結婚を決めて成婚退会されていくので、

今回はとても残念です。

 

結婚に向けての話を村岡様としていくうちに、

あまりにも安田家との価値観が違いすぎて、

これは一緒には暮らしてはいけないと判断したようです」

 

“交際終了”がきたことを、

幸恵さんに電話で告げると、

彼女はサバサバとした口調で言った。

 

「あの日から、何の連絡もこなくなったので、

こうなることはわかっていました。

これで私もスッキリしました。

 

育った環境も違うし、考え方も違う。

そこを何とかうまく擦り合わせて、

結婚できればいいなと思ったけれど、

 

お姉さんの一件があって以来、

やっぱりこの結婚は無理だと思いました」

 

恋愛は2人だけの関係で成り立つものだが、

結婚は入籍することによって

親兄弟、親戚がひも付いていく。

 

親族に操られ、

目の前の配偶者を守れない相手とは、

 

結婚しなくて正解なのではないでしょうか?

 

幸恵さんの次の出会いに期待を寄せて。

 

――松山友佳子

 

 

 

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